連載・おきなわ41物語/大綱曳と軽便鉄道のまち与那原町
- 掲載日:
- 2023.10.19
41、それは沖縄県にある市町村の数です。
本連載「おきなわ41物語」では、41市町村のイマの魅力を現地ライターが独自取材。
地元民しかしらない地域ならではの魅力や穴場スポット、とっておきの寄り道グルメなど、沖縄をもっともっと好きになってしまうような、唯一無二の旅のアイデアを紹介してまいります。
41の物語とともに、新しい沖縄を再発見してみませんか?
今回訪れたのは、沖縄最古の歌謡集「おもろさうし」にも登場するまち「与那原町」
豊富な水を求めて人々が集まり、集落ができたと言われている与那原町。沖縄最古の歌謡集「おもろさうし」にも登場する、沖縄で古くから栄えていた地域です。戦前は県で初めての軽便鉄道が開通し、産業経済の大動脈として活気に満ちあふれていましたが、軽便鉄道は沖縄戦で米軍の攻撃により破壊され、姿を消しました。戦後、戦争で被害を受けた人々の支援と、戦後復興のために働くシスターの養成を目的に作られた「聖クララ教会」は、「日本近代建築DOCOMOMO100選」にも選ばれており、沖縄を代表する名建築として、今も多くの人々に愛されています。
INDEX
| Access |与那原町までの行き方
車の場合
那覇空港⇒国道329号線で東へ、車で約20分。
ゆいレール、路線バスの場合
- 那覇空港駅からゆいレールで旭橋駅下車し、那覇バスターミナルへ
- 那覇バスターミナルから下記路線バスに乗車し、与那原で下車。
東陽バス<7>のりば
37番:那覇新開線 馬天営業所行(南城方面)
38番:志喜屋線 志喜屋行(南城方面)
30番:泡瀬東線 泡瀬営業所行(西原方面)
沖縄バス<6>のりば
39番:百名線 新原行(みいばるビーチ)
41番:つきしろの街線 休暇センター経由親慶原行(南城方面)
| interview |新たな発見がある、おすすめの目的地を教えてください
「みんなで創ろう活気あふれる美らまち与那原」~平和と文化・伝統を未来に綱げて~がテーマの与那原町。
与那原町は沖縄本島の東海岸南部に位置し、県都那覇市から9㎞の地点にあり、東南に南城市、西に南風原町、北に西原町と3市町村に隣接しています。今回は、THE与那原町!というコンテンツだけでなく、まだ誰も知らないような与那原町や、有名な観光スポットでも「そんな楽しみ方があったんだ!」という驚きのある場所も紹介したい!今回は地域を知り尽くした与那原町役場観光商工課のみなさんに、ズバリこんな質問をしてきました。
「新たな発見がある、おすすめの目的地や新しい楽しみ方を教えてください」
この問いに答えてくれたのは、与那原町役場観光商工課の玉木さん。玉木さんは観光商工課の若手NO1で、SNSを担当しています。そんな玉木さんが教えてくれたのは、「与那原大綱曳資料館」、与那原の歴史にも触れることができる「軽便与那原駅舎展示資料館」、変わりつつあるNEW与那原の姿でした。さっそく紹介していきましょう!
おすすめ①与那原大綱曳のすべてがわかる!観て・触れて・体験できる「与那原大綱曳資料館」
与那原大綱曳は、豊年祈願と子孫繁栄を願う神事として、行われてきた伝統ある行事です。東西合わせて90m、重さは5トンあり、支度を乗せた大綱が街を練り歩く様は、竜神のうねりを思わせ勇壮。大綱が合わさりカナチ棒が入った瞬間、綱が地面に叩き付けられて綱曳がスタート。東西に引き合いながらの攻防は見る人を魅了し、曳く人の心を熱くさせます。大綱曳に参加すると無病息災、子孫繁栄のご利益があるといわれ、毎年、町内外から多くの人々が訪れます。
そんな与那原大綱曳のすべてがわかる施設が与那原大綱曳資料館です。案内人は上原丈二さんです。
与那原大綱曳資料館(つなかん)
実際に曳いた大綱や各係の衣装が展示されており、本番さながらの迫力を感じられます。綱作りをはじめ、VRゴーグルを装着して大綱曳を仮想体感したり、大綱に乗ったり、大綱曳を盛り上げる太鼓や前舞などの体験もできるので、大綱曳の文化を存分に体感できます。映像を見ながらスタッフの方が優しく丁寧に解説してくれるので初めてお方でも心配ありません。十分なスペースがあるのでご家族やグループで訪れても楽しめます。
- 住所
- 島尻郡与那原町上与那原16-2 社会福祉センター 2F
- TEL
- 098-945-0611
与那原大綱曳を学ぶ・触れる
与那原大綱曳資料館はどなたでも自由に見学できます(無料)。資料館に入るとまず目に飛び込んでくるのは大綱です。この大綱は2022年に実際に使用されたもので、その迫力が伝わってきます。実際に触れたり、上に乗ったりすることもできます。
与那原大綱曳ビデオ(上映時間約17分)を観て、その歴史や特徴を学ぶことができます。
体験する
「旗頭」体験やヤーマを使っての「綱作り体験」や「金鼓隊」体験、VR体験など、与那原大綱曳を体感することができます。
与那原の伝統文化を次の世代に引き継ぐ取り組み
与那原大綱曳資料館では、与那原町の大綱曳を次の世代に引き継ぐ取り組みとして、地域の子供たちを受け入れています。取材当日も、20名の保育園年長組の子供たちが、与那原大綱曳を体験していました。ビデオ学習、綱作り体験、綱曳体験、旗頭持ち上げ体験とフルコースメニューでみんな大興奮でした。
おすすめ②与那原の歴史にも触れることができる「与那原町立軽便与那原駅舎展示資料館」
次のおすすめスポットは、与那原町立軽便与那原駅舎展示資料館です。案内人は喜納大作さんです。
軽便鉄道は、1945年の沖縄戦による設備破壊という形で30年余りの歴史を閉じました。その後、数少ない貴重な写真資料、当時を覚えている年配の方々からの聞き取りなどを行い、今は無き当時の駅舎の姿を、浮き彫りにしていきました。そして2014年、戦後から約70年の時が流れ、軽便与那原駅舎はその姿を復元させました。
案内人:喜納大作さん
与那原町立軽便与那原駅舎展示資料室 学芸員
与那原の港は沖縄本島東海岸の中心的な港で、沖縄中北部地方との海上交通の要の場所として大いに賑わっていました。また、与那原近郊から那覇方面への中学生や女学校生の通学にも利用されており、軽便に乗って通学することが進学できた証であり誇りにもなっていたそうです。
軽便与那原駅舎展示資料室では、当時の情景や出来事を写した貴重な写真、路線図や年表といった大型パネルを展示しておりますので、軽便鉄道、ひいては沖縄の歴史にも触れることができます。10月21日(土)、22日(日)にはイベントも開催しますので、是非お立ち寄りください。お待ちしています!
軽便鉄道とは?
現在の沖縄には、ゆいレールが那覇空港から那覇市街を通り、首里、浦添まで片道約37分で運行していますが、戦前はもっと長い距離、多くの路線を走る鉄道がありました。今から約110年前、那覇を起点に「軽便鉄道」が敷設され、汽車が走っていたのです。正式には、「沖縄県鉄道」といいます。線路の幅が、本土で走る汽車のものより少し小さい「軽便鉄道」という規格でした。庶民からは「ケービン」の愛称で親しまれました。
1914年与那原線の開通
軽便鉄道は3路線が運行していました。那覇駅から与那原駅までの与那原線、那覇駅から嘉手納駅までの嘉手納線、那覇駅から糸満駅までの糸満線の3路線です。その中で一番早く与那原線が1914年12月1日開通しました。那覇駅を起点に古波蔵、真玉橋、国場、一日橋、南風原、宮平、大里、与那原の全9駅、その距離は約9.4㎞で、運行時間は汽車で32分でした。
1914年は沖縄にとって鉄道イヤーで、5月に沖縄電気軌道(チンチン電車)が首里ー大門前間で開通、11月には沖縄馬車軌道が与那原ー小那覇間で開通しています。
当時の与那原の風景
与那原の港は古くから沖縄本島東海岸の中心的な港で、沖縄中北部地方との海上交通の要の場所でした。
北部から切り出された木材・木炭を中心とした物資は、山原船(やんばるせん)で与那原港で下ろされ、消費地である那覇・首里へ運ばれました。反対に生活物資が北部や離島に運ばれる中継地点として賑わっていました。その賑わいの様子はジオラマで再現されています。
見て触れて思いを馳せて(展示エリアの紹介)
与那原町立軽便与那原駅舎展示資料館では、沖縄戦にて消失した軽便鉄道の貴重な写真や路線図、年表などの展示や映像、「切符切り」体験など、多彩なコーナーで構成され、屋外では当時の柱(遺構)を見ることができます。
切符切り体験
切符に日付の印字や懐かしい「切符切り(入鋏)」などの駅員としての体験も行えます。自動改札の無い時代には、ものすごいスピードで切符を切る駅員さんが改札口に立っていたのも今となっては懐かしい光景です。
ヒストリーエリア
年表で見る与那原駅の歴史と国内での出来事を比較しています。見る角度で変わる不思議な写真もあります。
フォトエリア
当時の情景を見ることが出来ます。ARマークの付いた写真にタブレット端末をかざすとカラー写真に生まれ変わり、当時の情景が生き生きと蘇ります。
ムービーエリア
独自コンテンツの「与那原軽便物語」を座って見ることが出来ます。じっくりと観れる40分版、短縮されたダイジェスト版なら17分、そしてキッズ向けの20分版が用意されています。
史跡エリア(今なお残る与那原駅の跡)
敷地は「沖縄県鉄道与那原駅跡」として国の登録記念物(遺跡関係)となっており、屋外に出ると当時の柱も見ることができます。沖縄を走った鉄道の数少ない本物の証(あかし)は必見です。
イベント情報
かつて沖縄県鉄道与那原線の終点だった与那原駅。旅の始まり/終わりとなる駅舎で、旅や乗り物をテーマにした古本市を開催します(出店/波止場書房)。また、1914年(大正3)の県鉄開通式でビアホールの出店があったことや機関車がドイツ製だったことにちなみ、駅前広場でクラフトビールが飲めるオクトーバーフェストも同時開催します。
※ブックパーリー2023(主催:ボーダーインク)関連イベント
※写真は過去のブックカフェのものです。
与那原駅 旅本マルクト
10月21日(土)〜10月22日(日) 各日10:00〜18:00
■場所:与那原町立 軽便与那原駅舎展示資料館 および 駅前広場(沖縄県島尻郡与那原町3148-1)
■入館料:無料(通常は町外からの来館者100円)
■出店者(予定):波止場書房(古本)、ゆいレール(グッズ)、Yuna(雑貨)、AGARIHAMA BREWERY(クラフトビール )など
※出店者情報はSNSにて随時更新予定
■駐車場:駅舎駐車場(思いやり駐車場1台、その他出店者の利用に限ります)、与那原町役場駐車場 (与那原町上与那原16)や上の森公園駐車場(与那原町与那原3181)など近隣の駐車場をご利用ください。 近隣の方は、徒歩でのご来館にご協力くださいますようお願いいたします。 飲酒を予定されている方は公共交通機関をご利用ください。
■お問い合わせ:098-835-8888(軽便与那原駅舎)
おすすめ③与那原に吹く新しい風!東浜にできたクラフトビールのお店「AGARIHAMA BREWERY」
おすすめ③では、与那原に吹く新しい風を紹介します。仕掛け人は、株式会社YUKAZE代表取締役社長の谷正風さんです。ここでは谷さんに与那原の魅力やおすすめスポットなどをお聞きします。
谷 正風 さん
株式会社YUKAZE 代表取締役社長
1987年10月4日生まれ、那覇市出身。沖縄県立首里高等学校卒業後、埼玉大学教養学部中退。学生時代より書道家として独立し、関東を中心に書家・クリエイターとして国内外で活動。2015年に沖縄へ拠点を移し、2016年12月に由風出版株式会社(現・株式会社YUKAZE)を設立。実業家として複数の事業、法人を立ち上げ活動中。業種を問わず「各業界のプロフェッショナル」と共に新たな価値観を創造し、企業・社会の発展や課題解決に取り組んでいる。
与那原に拠点を置いて活動される理由は?
与那原のおすすめスポットはどこ?
休みの日は子供たちとよく散歩をします。
沖縄そばで有名な「与那原家」さんの裏に水路があり、水路沿いに散歩ができます。ずっと歩いていくと、与那原の代名詞でもある大綱曳の会場や、橋に架かる大綱のモニュメント、山原船の紹介パネルなどがあり与那原の歴史を学ぶことができます。
まだまだありますよ!
散歩でいうと、知念高校のちょうど向かいあたり板良敷海岸のところ、歩道も広くタコノキが植えられており、海を眺めながら気持ちよく散歩ができます。季節によっては早起きすれば朝日を拝むこともできます。
与那原は夜も面白いですよ!
やんばる船の停泊地として栄えた与那原ですが、船乗りさんたちが過ごす街の名残がまだ残っています。街の中心地に徒歩圏内で飲食店が数多くあり、楽しく食べ歩き・飲み歩きができます。歴史・雰囲気のあるお店や、リノベーションしたお洒落なお店もあり、いろいろな楽しみ方ができます。個人経営のお店が多いため当初は敷居が高い印象がありましたが、どのお店もお店の方が親切・丁寧ですぐに打ち解けました。最近では町外からも若い方含め飲み歩きにくる方も増えていると聞いており、南部の新しいスポットとして注目されていると思います。
AGARIHAMA BREWERYについて
与那原は大綱曳まつりが有名ですが、お祭りと言えばお酒ですよね。もともと与那原にはまさひろ酒造があり、地元のお酒として泡盛は昔から愛飲されていました。お祭りや日常を彩り、人と人とを繋ぐお供として、新たな架け橋となるようなお酒を改めて地元で作りたいという想いから、与那原生まれのクラフトビールが誕生しました。
与那原で新しくできたクラフトビールは、東浜にある「AGARIHAMA BREWERY」で楽しむことができます。工場見学や飲み比べ、食事もできますのでぜひ訪ねてみてください。今後は与那原特産のひじきや地元の食材を使ったビールなども開発していく予定です。
AGARIHAMA BREWERY
初心者からクラフトビール好きの方まで楽しめるよう、全9種のクラフトビールと各種ビアカクテルが用意されています。工場見学や飲み比べセットもあります!OPEN:17:00~23:00(火曜定休)
- 住所
- 島尻郡与那原町2-4-1F
- TEL
- 098-917-0311
| model course |紹介スポットも回れる、とっておきの旅プラン
【与那原町】活気あふれる美らまちで暮らすように過ごす2泊3日の旅
豊富な水を求めて人々が集まり、集落ができたと言われている与那原町。沖縄最古の歌謡集「おもろさうし」にも登場する、沖縄で古くから栄えていた地域です。戦前は県で初めての軽便鉄道が開通し、産業経済の大動脈として活気に満ちあふれていました。近年開発された東浜エリアには住宅も立ち並び、住みやすい街としても注目されています。そんな与那原で暮らすように過ごす2泊3日の旅です。
| 編集後記 |おきなわ物語編集部
今回の取材で、与那原町が戦前、那覇と肩を並べるほど栄えた地だったということを知ることができました。その繁栄の歴史は琉球王朝時代から続き、与那原大綱曳は連綿と引き継がれている行事であるという事も素晴らしいと感じました。
また、那覇への物資供給の物流拠点で、物と人の流れを効率化するために軽便鉄道が開通したという歴史があり、貨車には木材やさとうきび、客車には多くの学生たちを乗せて緑豊かな土地を駆け抜ける情景がまぶたに浮かびました。沖縄戦によりすべてが破壊され、与那原の風景も変わらざるを得なかった歴史は残念でなりません。
このように見どころの多い与那原町のモデルコースを作りながら感じたのは、ほとんどの立ち寄りスポットに歩いて行かれるという点です。「沖縄本島で一番面積の小さいまち」の特徴があらわれた瞬間で、与那原町は徒歩や自転車、近距離タクシーを使って楽しめるまちだと感じました。そんな与那原町で暮らすように旅を楽しんでいただきたいと思います。
| comment |与那原町役場観光商工課からのメッセージ
与那原町役場観光商工課
「みんなで創ろう活気あふれる美らまち与那原」~平和と文化・伝統を未来に綱げて~
沖縄本島にある地方自治体で1番小さいですが、歴史・文化・自然がぎゅっと詰まった町それが与那原町です。小さいからこそ徒歩や自転車で町の景色をゆったりと堪能できるメリットがあります。
与那原町を代表するイベント、与那原大綱曳まつりは来年(令和6年)8月3日(土)、4日(日)予定です、ぜひ遊びに来てください!
【住所】島尻郡与那原町字上与那原16番地
【電話番号】098-945-5323
与那原に住み始めたきっかけは、高校進学前に、実家が那覇から与那原に引っ越したことです。当時学校は那覇へ通っていましたので、あまり地域になじみはありませんでしたが、その後10年ほど県外に出てクリエイターの活動を経て沖縄に戻った際に、改めて与那原の素晴らしさを体感しました。
東浜地区の整備やMICE計画などの新しいまちづくりはもちろん、歴史・文化がしっかりと継承されており、立地的にも那覇や高速にもアクセスが良く、すごくポテンシャルが高い場所だと思いました。街自体に非常に活気があるので、与那原を一言で表すと「コンパクトかつエネルギッシュ」な街だと思います。沖縄へ戻る前は事業の活動拠点をどこに置こうかと悩んでおりましたが、与那原以外にないと感じ、生活と事業の活動拠点を両方置くことにしました。