旧暦と沖縄の年中行事

地域に伝わる伝統行事と家の中の年中行事。
沖縄には旧暦をベースにさまざまな形の祈りがあります。
このページでは過去にさかのぼって、
旧暦と年中行事のつながりを中心に見てみます。

旧暦とは?

一口に旧暦と言っても、なじみのない方にはピンとこないかもしれません。
沖縄の行事に触れる前に、まず現在使われている暦と旧暦の違いについて見ていきましょう。

私達が普段使っている暦は、地球が太陽の周りを回る周期をもとにした「太陽暦(グレゴリオ暦)」です。
太陽の周期は約365.25日で、季節はそれによって移り変わります。
太陽暦は、一年を365日としてそれを12ヶ月に分け、
4年毎に閏年をおくことで季節と暦のずれが出来るだけ小さくなるように作られています。

一方の「太陰暦」は、一ヶ月を天体の月(太陰)が満ち欠けする周期に合わせて作られています。
しかし、天体の月が地球をまわる周期は約29.5日。
それを12回繰り返すと一年は354.36日となり、実際の季節と暦がだんだんずれてしまいます。
そのずれを補正するために、約3年に一回閏月を入れるほか、
季節を知る目安として、約半月ごとの季節の移ろいをあらわす中国伝来の「二十四節気」を取り入れました。
これが、「太陰太陽暦」、一般に「旧暦」と呼ばれる暦です。
日本でも太陰太陽暦は、明治6年に太陽暦に改められるまで使われていました。

旧暦と年中行事の結びつき

さて、沖縄ではお墓や仏壇、ご先祖様に関する年中行事をはじめ、
地域に伝わる祭祀のほとんどは旧暦にしたがって行われています。
年中行事の多くは、かつて沖縄が農耕社会だった頃に形成されました。
それまで、農家の人たちは自然の変化や作物の生育を見て、
種まきや収穫のタイミングをはかっていたと言われています。いわば「自然暦」です。

ところが、頻繁に上陸する台風や日照りなどの厳しい自然から作物を守るには、
神々に祈る以外に打つ手は浮かばず、祈り自体が重要な意味を持つようになります。
同時に税として納められていた穀物の豊作は、琉球王国の願いでもあったために
王府による「神事」の体系化がはかられ、村の祭祀にも深く関与するようになりました。
旧暦と一緒に「二十四節気」も沖縄に伝わり、琉球王府はこれらを取り入れて
定期行事や地方行事などの日選びを行うようになりました。
こうして、村の祭祀は年中行事となり、作物の成長に影響する季節の節目に
旧暦にもとづいて行われるようになっていったのです。

一方で王府行事の流れをくまずに、地域に継承されてきた行事も数多く存在します。
また、家内安全や子孫繁栄などの家族単位の願いも年中行事の中に組み込まれ、
こうした年中行事を人々は、暮らしの中の折目(ウイミ)または節日(シチビ)として大切に守り続けてきました。

旧暦と年中行事の結びつき

旧暦と年中行事の結びつき

時代の移り変わりの中で

時代は変わり、明治政府による近代化政策の一環として、
日本では1873(明治6)年に太陰太陽暦(旧暦)から太陽暦(新暦)への改暦が施行されました。
しかし、本土と異なる歴史をたどってきた沖縄は、それ以後も変わることなく
ほとんどの年中行事は慣習どおりに行われていきます。

沖縄の年中行事に大きな変化をもたらしたのは、改暦ではなく第二次世界大戦でした。
物資不足や自粛ムード、そして地上戦の拡大で中断を余儀なくされてしまったのです。

また、もう一つの要因として、主要産業が農業から商工業へと移行するにつれて農村の過疎化が進み、
加えて人々の生活スタイルも大きく移り変わることで、かつては村落の人々が一丸となって行なっていた
年中行事を従来通りに行うことが難しくなったということも挙げられます。

やむをえず行事を中断あるいは簡素化したり、郷友会や保存会などを結成して行うようになるなど、
年中行事の多くは、それぞれの存続の道を模索することになったのです。

変わるものと変わらないもの

戦後復興と共に中断していた行事が再び行われるようになり、
近年になって伝統行事を復活する新しい動きが県内各地で見られるようになりました。

そのひとつに、2007年に71年ぶりに復活した
八重瀬町富盛に伝わる「十五夜綱(ジュウグヤヂナ)」があります。
また、昨年は、沖縄市の泡瀬地域に伝わる独特の
「太鼓燈篭 (テークドゥールー) ガーエー」と呼ばれる行事を伝統にのっとって忠実に再現。
旧暦6月25日の米の収穫を感謝する「六月カシチー」の日に、
泡瀬に言い伝えられる霊石「ビジュル」へ奉納しています。

地域に伝わる年中行事とは対照的に、火の神(ヒヌカン)やご先祖様への御願(ウガン)のような
家族や生活に密着した年中行事は、時代の移り変わりに揺れることなく、
折目(ウユミ)・節日(シチビ)として、はるか昔から暮らしの中に深く根付いてきました。
旧暦入りのカレンダーには、毎月神仏に関係する行事があり、
それとは別に毎月1日と15日は仏壇にお茶湯、火の神には白米を盛った茶碗(ウブク)を供えて
祈りを捧げています。これは行事と呼ぶより習慣と言ったほうがよさそうです。
それくらい沖縄では祈りを身近な存在と考えている人が多いのです。

「ウートートー」の言葉から始まる沖縄の祈り。
それは、毎日に感謝しながら、家族の幸せを思う大切なひとときです。

変わるものと変わらないもの

変わるものと変わらないもの

掲載日:
2017.06.01

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