令和5年復興の今
見て触れて、
いまだからこそ見られる
首里城の現在地
首里城公園では現在、2026年度の正殿完成に向け、着々と工事が進められています。「見せる復興」をテーマにする令和の復元工事では、復元作業の様子を間近で見学できたり、工事作業の詳しい内容が紹介されたパネルが展示されていたりと、見どころがたくさん!首里城公園解説員の松田幸乃さんに、首里城公園を案内していただきました。
「見せる復興」をテーマに
さまざまな展示物で
復興の様子を紹介
2019年10月31日に発生した火災では、正殿や南殿、北殿など、全部で9つの施設が焼失しました。2026年度の正殿の復元完成を目指し、現在進められている復元工事は、「見せる復興」がテーマ。園内では、工事作業が目の前で見られる見学デッキが設けられているほか、火災被害を受けた品々が各所に展示されています。自由に見学することもできますが、有料ガイドツアー「首里城60分ぐるっとツアー」に参加すると、解説員の方が首里城の歴史も含めて丁寧に説明してくれるので、より理解を深めることができます。
今回案内してくれたのは、解説員を務めて10年以上になる松田幸乃さん。首里城がこれまでどんな歴史を歩んできたのかということに始まり、近年の様子や火災後の復興の取り組みについてなど幅広い情報を、首里城の復興現場を歩きながら伝えてくれました。また、「令和の復元」に関しては、主に3つの柱があると言います。まずは焼失した正殿を皮切りとした「首里城の復元」、次に、復元の様子を一般に向け公開・発信する「段階的公開」、最後にこうした実施を通して行う「地域振興・観光振興への貢献」です。
めったに見ることのできない復興現場が見られること自体がとても貴重な体験ですが、この3つの柱に基づいて復元作業が行われていることから、主要な展示スペースには案内板が必ず設置されているので、見学者にとって復興状況がとてもわかりやすくなっています。ツアーの中で松田さんが案内してくれたのは、首里城正殿の「御庭(うなー)」へと通じる奉神門の一箇所。全焼は免れましたが、北側の屋根や外壁が消失。現在は復元されていますが、地面との隙間を除くと、炭化した木片の一部が確認できました。
首里城火災でも倒れなかった一対の大龍柱。首里城正殿の正面から場所を移動し、泰神門前に設置された展示室内に保管されています。2022年度に補修作業が施されていて、設置されたモニターで作業の様子を動画で紹介しています。
火災前は、正殿の前に向かい合うように立っていた龍柱。片側が火災の火を直接受け、赤く変色しています。
首里城正殿の屋根にあった獅子瓦や、泰神門の瓦など、火災の残存物が展示されています。また、「木材」、「瓦」、「石材」、「漆」などテーマごとに解説パネルや実物の素材が紹介されていて、復元までの過程を知ることができます。
“令和の復元”では最新の研究成果を元に、より琉球王朝時代の首里城に近づける形で復元工事が進められています。展示室では具体的な内容がパネルで紹介されています。
完成まで残り2年!
作業が進む復元現場を見学
有料区域内にある復元現場には見学エリアが設けられています。中でも、実物大の図面を描く「原寸場」はぜひ見てほしいポイントです。一般的な家屋をつくる場合、図面は手元で確認できる程度の大きさですが、首里城は原寸大の図面を実際に引きます。その様子が見られるのが「原寸場」。作業場を囲うように窓ガラスが設置され、木材を加工する職人たちの技を目の前で見ることができます。作業は日々変わるので、何度訪れてもその時にしか見られない復興現場に立ち会えることは、「見せる復興」ならではです。
原寸場のそばには、首里城正殿の屋根につけられていた龍頭棟飾(りゅうとうむねかざり)が展示されています。もとは沖縄の焼き物を組み合わせてつくられたものとのことですが、展示されているのは火災によりほとんど原型をとどめていない、がれきの状態。眼や鱗、口髭など、それぞれのパーツごとに集められて展示されていますが、その様子からは火災のすさまじさが感じられます。ショッキングな火災だったからこそ、復元に向けて着々と作業が進められる様子を見ることができることに喜びを感じます。
2023年9月、復元工事現場では、1本目の柱を建てる際に行う「立柱式」が行われ、いよいよ本殿の本格工事がスタート。これまでは木材の準備など、建てるための下準備の段階でしたが、ついに本殿を実際に建築するための第一歩を踏み出しました。11月現在は正殿の柱や梁を組み立てる「建方工事」が進められていて、2024年度は木彫刻の取り付けや屋根の瓦葺き、漆を使った塗装工事がスタートします。これからますます見逃せない、今しか見られない光景が続きます。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
復元現場へと向かう泰神門をくぐると、木材倉庫の壁面に描かれたグラフィックがお出迎え!復元後の姿をイメージできるように正殿や北殿、南殿、御庭が表現され、フォトスポットとしても人気です。
驚くほど緻密に描かれている正殿グラフィック。奉神門の中央口手前からだとよりリアルに見え、本物の首里城正殿と見間違える人もいるそうです。
首里城正殿の復元工事が進む素屋根に、3階建ての見学エリアが設けられました。復元に使用される木材の実物を触ることができるので、各フロアに展示された解説パネルを見ながら、復元工事を体感してみてください。
各フロアごとに実施されている工事内容が異なるのも特徴の一つ!職人との距離も近いので、臨場感を味わえます。