【本島南部】南城市 斎場御嶽ガイド

沖縄県の南部・東海岸に位置する南城市は、自然豊かで美しい絶景を望むことができ、また貴重な史跡が数多く残っています。
なかでも琉球開びゃく伝説(琉球王国の成立にまつわる伝説)にあらわれる七嶽(七つの聖地)のひとつである斎場御嶽(せーふぁうたき)は、「琉球王国のグスク及び関連遺産群」として、2000年にユネスコ世界文化遺産に登録されました。
琉球王国時代から現在に至るまで大切にされ続けてきた神聖な祈りの場所。ただの観光地として訪れるのではなく、ガイドと一緒にゆっくりと歩いて回ることで、沖縄の歴史や精神文化の背景を体感できることでしょう。

御門口(ウジョウグチ)でまず一礼

世界文化遺産に登録されたことで注目を集める斎場御嶽ですが、もともとは琉球王国時代に神事が行われていたとても神聖な場所です。
琉球の創世神「アマミキヨ」が渡来し、住みついたとされる南城市知念・玉城にある聖地を巡拝する行事「東御廻り」(アガリウマーイ)のひとつでもあります。チケットの発売所がある南城市地域物産館から歩くこと約7分、緑の館・セーファに到着。

ここでまず、聖域に入る際の注意点や心構えなどのビデオを観てから、斎場御嶽の敷地内に入り、斎場御嶽の参道への入り口である「御門口」(ウジョウグチ)へ向かいます。
御門口の右側には6つの香炉が配されていますが、これらは御嶽内にある6つの拝所の分身とされています。昔は男子禁制で、また神事に関わるものしか御嶽内に入ることができなかったため、一般の人はここで祈りを捧げたと言います。

御嶽内に入る前に注意したいことは、いまから大切な聖域に入らせていただくという意識を持つこと。
「御門口の前で、一礼してから入りましょう」とガイドさんに教えてもらった通りに挨拶をして入れば、神聖な気持ちになることでしょう。ちなみに、御門口の下方からは久高島を見ることができ、王国時代の遥拝所だったと言われています。

首里城と同じ名前を持つ拝所

琉球石灰岩でできた石畳の坂道を登って行くと、大庫理(ウフグーイ)と呼ばれる最初の拝所に到着します。
大庫理は大広間や一番座という意味を持ち、様々な儀式が執り行われた首里城正殿の二階の呼び名です。同じ名を冠したこの場所は、神女の最高位である聞得大君(きこえおおきみ)の就任の儀式が行われたところでした。一段高くなっている石畳にあがるときは、一礼することを忘れずに。また香炉のある場所には上がってはいけません。

次の拝所に向かう途中、水が溜まった小さな池を発見。イモリが心地良さそうに泳ぎ、季節によってオオゴマダラなど希少な昆虫を見ることができます。たくさんの木々が生いしげり自然の豊かさを感じられる場所ですが、実はこの場所は沖縄戦の艦砲射撃の着弾跡。この着弾跡に雨水などが溜まり池のようになっているのです。
戦後、ほとんどの艦砲穴は埋められるなどして残っているものが少ないそうです。

貴重な戦争遺跡を後にし、三番目の拝所「寄満」(ユインチ)へ。
台所を意味しますが、ここで調理を行ったわけではなく様々なものが寄り満ちる、豊穣が寄り満ちる場所と解釈されています。この拝所も首里城内に同じ名前の建物があることから、琉球王国にとって斎場御嶽がいかに重要な聖地であったかが伺えます。

聖なる水がしたたり落ちる

鬱蒼と茂る森を抜けて少し開けた場所に、長く伸びた2本の鐘乳石からしたたり落ちる水滴を受ける2つの壺があります。
奥にあるものが「シキヨダユル」、手前が「アマダユル」で、この壺に溜まった水は「聖水」として神事などに使用されたと言います。
鐘乳石が伸びる大きな岩の上には、神様の木が生い茂っているため、それを伝って降りてくる水滴は浄化され聖なる水になると考えられていたようです。大庫理で行われる聞得大君の就任儀式でも、この聖水が使用されたそうです。

心静かに祈りを捧げましょう

最後に、大きな岩が支えあうようにそびえる場所に到着しました。
三角形の空間の突き当たりの部分を「三庫理」(サングーイ)、右の岩の上部を「チョウノハナ」といい、どちらも拝所になっています。夏でも涼しく感じるほど風の通りがよく、厳かな空気が感じられますが、三庫理からは近年、金製の勾玉などが見つかりさらに気高い場所であると考えられているようです。

「ここでお祈りをしましょう」と、ガイドさんに教えてもらいながら、岩に向かって手を合わせます。
右手がご先祖様、左手は太陽や自然。沖縄の場合は拍手ではなく、手を合わせて「さりうーとーとー、ありうーとーとー」と声に出して神様に呼びかけます。名前や出身地、住所を述べて自己紹介が済んだら感謝の気持ちをのべ、そしてお願いごとへ。
沖縄らしい祈りの文化が体験できます。

自然を感じ、沖縄の文化を感じる

三庫理はとても小さな場所ですが、ここからは神の島といわれる久高島を望むことができます。
絶景のため、ここから久高島へ遥拝(遠いところから拝むこと)をする方も多いそうです。

斎場御嶽には、今でもたくさんの人が祈りを捧げに訪れます。
豊かな緑、凛とした空気を楽しみながら、じっくりと御嶽をまわることで、沖縄に息づく祈りの精神文化のルーツを垣間見ることができるはずです。

ガイドさんからのメッセージ

「(ガイドを頼んで)良かったよ、と拍手をもらうときはとても嬉しいです。また、若水信仰など、沖縄と沖縄県外の文化や信仰に共通点があると驚く観光客の方も多いですよ」と話してくれたのは、豊富な知識とユーモアのあるトークが楽しい、南城市ガイド・アマミキヨ浪漫の会のスタッフ・長嶺清喜さん。

斎場御嶽の説明だけでなく、沖縄の文化や戦争の歴史なども交えて広く情報を発信しています。
斎場御嶽の案内だけでなく、久高島や東御廻りのコースもあります。

<コース説明>

●開催期間 通年
※旧暦5月1日〜3日、旧暦10月1日〜3日は斎場御嶽の休息日

●所要時間/約50分(相談に応じる)

●参加料金/1~10名まで1グループにつき2,000円
※11名以上1名増すごとに100円増
※受付時間 9:00〜16:00
※1週間前までにご予約することをおすすめします
土、日、祝日限定で定時ガイド(高校生以上1名300円)もあります

●コース順路
緑の館・セーファ→御門口→大庫理→寄満→シキヨダユルとアマダユルの壺→三庫理
※転倒防止のため、サンダル・ヒールでの入域はご遠慮ください

●問い合わせ/緑の館・セーファ
098-949-1899

https://okinawa-nanjo.jp/sefa

お気に入りについて
掲載日:
2017.04.01

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