島の大自然を全身で感じる旅
沖縄でしか出会えない瞬間を求めて
まだ行ったことのない土地に飛び込んで、未知の絶景と出会いたい。
大自然を五感で受けとめ、その瞬間をカメラにも収めたい。
そんなワクワク感を胸に抱いて、これまでさまざまな土地へ旅してきた。
今回、向かったのは亜熱帯の島・沖縄。
そこには今まで出会ったことも撮ったこともない、雄大な本物の自然が広がっていた。
スピリチュアルな2つの滝を探して
緑深い「やんばるの森」の奥地へ
散策を始めてすぐのこと、見慣れない蝶々がふわりふわりと頭上を越えて森の奥へ飛んでいく。まるで別世界に誘われているような瞬間。
そんな神秘的な幕開けで始まったター滝への冒険。膝下まで川に浸かり、ジャブジャブと水をかき分け、川の流れをさかのぼっていく。川は驚くほど澄んでいて、足音に驚いた川魚が慌てて逃げるのが見える。途中、スリリングな岩場を越えながら進むことおよそ30分、ゴーッと力強い滝音が。滝つぼに胸まで浸かり、落差10mはありそうな滝に近づく。帽子が飛ばされるほどの風圧と、顔に打ち付ける水しぶき。大自然のパワーを肌で感じ、思わずシャッターを切った。
もうひとつの滝・比地(ひじ)大滝では、希少な生物に目を凝らしながら、比地大滝キャンプ場から滝までの整備された遊歩道を40分ほど歩く。道中、キョッキョッと響く鳴き声は、ノグチゲラというらしい。青緑色に光る身体が美しいリュウキュウハグロトンボも発見できた。希少な生き物たちが暮らす沖縄の大自然に包まれると、あらためて自分も自然の一部なんだと強く感じた。
聖なる地「大石林山」で出会った
ガジュマルと奇石の造形美
琉球神話の聖地で、今もユタが祈りを捧げる大石林山(だいせきりんざん)。海から山を望むと、観音様の横顔のようにも見えるという。
その聖なる山のシンボルのひとつが、樹齢数百年といわれる御願(うがん)ガジュマルだ。空気中からたくさんの気根が大地に向かって伸び、巨体を支える不思議な光景。気根はすべすべとし、どれも垂直で滝の流れを思わせる。ファインダー越しのその造形の美しさに釘付けになった。
山頂付近は先のとがった奇岩が点在していて、その造形に思わずシャッターを切った。2億5千万年前に海中でつくられた石灰岩が、地殻変動で地表に現れて、風雨に削られて今の形になったという。
ここには珍しい石がある。その名も「生まれ変わりの石」。岩の穴を3回くぐることで生まれ変われるといわれている。沖縄の人々は、そういった奇石に神の姿を見出して、自然を通じて神々と対話しているのだろう。
ふと足元を見ると、 無邪気な顔をしたオキナワキノボリトカゲ(絶滅危惧種)がこちらを見上げていた。レンズを向けても動じない。いや、自分に気づいていないのか。初めて、この大自然に自分が溶け込んだように感じた。
天然記念物に指定された
塩水が湧く不思議な川「塩川」へ
海に囲まれた島国・日本でも、“塩水が湧き出し、流れる川”はほとんどない。その希少な川のひとつが本部(もとぶ)町にある塩川で、国の天然記念物にも指定されている。塩水が湧く現象は世界的にも珍しく貴重だといわれる。
草木に隠れて目立たない塩川には、ひっそりとした雰囲気が漂っていた。塩分の正体は海水らしいが、海面より高いこの場所に、どうやって湧き出てくるのだろう?科学的にもその理由は謎のまま。全長たった300mの短い川には、未知のロマンが詰まっていた。
今回訪れた沖縄の自然はどれも神秘的で独創的。でも、そこにいる生き物も植物も川も石も、外から来たものをそのまま受け入れてくれるような、不思議と温かい雰囲気があった。だから思う存分探検して写真を撮った後も、また戻ってきたい、そう感じられる旅になった。